メルクミリポアの無料技術講習会MILLI-SCHOOL®をご存知でしょうか?
超純水・純水の基礎から応用、使い方のポイントなど様々なノウハウをお伝えして、毎回盛況です。
でも、日程が合わないから…、近くで開催していないから…、など、参加したくても参加できないというお声もたくさんいただいています。
そこで、少しずつではありますがMILLI-SCHOOLの一部と、Webだけのプラスαの情報・知識を「ミリQ百科」として連載していきます。
こちらは、第16回からのページです。
第1~15回までは、こちらをご覧ください。
初期のミリQを使ったことがある方は、比抵抗値が上がるのに少し時間がかかったというイメージがあるかもしれません。カートリッジをハウジングに(写真の白い筒)にセットする形なので、装置内に滞留している水の量が多かったのです。そのため、循環して純度上げるのに時間がかかりました。現在はカートリッジも改良され、またイオン交換樹脂の能力も上がっているので、今のミリQは比較的早く18.2Mω・cmまで水質が上がるのです。
ミリQの進化を見ていくと、なぜ現在の精製方法、形になっていったのか、が分かります。次回は、その次のタイプのミリQと比べて見てみます。
細胞培養をするために使う水としてパイロジェンフリー水が求められていたことから、1985年、これを除去するために限外ろ過膜をとりつけたミリQが登場しました。ミリQ4W UF(限外ろ過)タイプです。 限外ろ過膜はタンパク質や酵素などの実験で分離、精製、脱塩などよく使われていますが、これを超純水に組み込むことで細胞の成育阻害因子であるパイロジェンやRNAを分解する酵素のRNaseが入っていない超純水を採水することができます。 機種によって使うUF膜のタイプも異なっていますが、分画分子量5,000~13,000位の膜が使われています。 写真のタイプでは、一番右のハウジング(丸い筒の部分)にUF膜をセットして使っていました。その後も細胞培養や遺伝子実験に使う超純水製造には、装置内のフローにUF膜を組み込んだタイプが販売されてきました。ところが、このタイプは高感度の機器分析などには向いていないため、分析をしようと思うと分析に適した別のタイプの超純水装置を選ばなくてはならず、この頃は、用途が変わるたびに機種選定をしなおす必要がありました。 |
最新のミリQでは、UF膜を装置の内部ではなく、最終フィルターとして接続できるようになっています。これであれば、ベースとなるミリQが1台あれば、あとは用途に合わせてフィルターの種類を変えるだけとなるわけです。現在販売されているUF膜のカートリッジは、BioPakというものになります。 » 限外ろ過について詳しく知りたい場合は、 超純水・純水の技術解説:最終フィルターとPODPakの限外濾過膜(UF膜) をご覧ください。 次回は、世界初の卓上型タイプについて、お話します。 |
» BioPak 製品情報 » BioPak 技術資料 |
ところが、最近の装置は実験台などの上に置くことができる卓上型になっています。当たり前と思われるかもしれませんが、実は登場した当初は画期的だったのです。なぜなら、交換するフィルターがむき出しのままでは卓上型にできないので、そこを何とかしなければならなかったからです。
そこで開発されたのが、カートリッジフィルターとハウジング(フィルターの入れ物)が一体となったものでした。ディスポワンカートリッジ(DOCカートリッジ)という名前でしたが、実はこれを作り、使い始めたのは日本でした。当時、山形県米沢市にメルクミリポアの日本向け製品工場があり、そこで試行錯誤して作られました。これにより、1987年にMilli-Q SP(写真)が製品化され、台の上にも置ける形となりました。
その後、メルクミリポアのスタンダードとしてフランス工場で製造されることとなり、Q-Pakカートリッジ(写真)としてMilli-Q Plusなどの装置にも使われるようになったのです。以降の装置は、超純水装置、純水装置を問わず台の上に置けるため、現在では、あえて卓上型と呼びませんが、歴史的には卓上型に分類されています。また、今では消耗品として様々なカートリッジが販売されていますが、どれも精製用フィルターや樹脂、活性炭などはハウジングの中に入っていて、お客様が交換される際に中の水が大量に出てくることはないかと思います。
設置場所の制限が大きかった壁掛け型から設置自由度の高い卓上型へ。水質だけでなく使い勝手の向上も、製品の進化には重要なポイントとなっています。
次回は、超純水・純水を精製するカートリッジの進化について見てみたいと思います。
また、放射線と人々の健康に関わる総合的な研究開発に取り組む国内で唯一の研究機関である、放射線医学総合研究所(放医研)においてもElixでの試験が行われて、その結果が放医研のホームページのお知らせに掲載されており、Elix水(ホームページ上ではRO水と記載されている)により水道水中の放射性ヨウ素が除去されたことが示されています。
ただし、ElixやMilli-Qで精製された水はあくまで試験用ですから、飲むことはできません。
次回から閑話休題、POUフィルターについての説明に入ります。
使用目的・用途 | 製品名 | 除去機構・素材・特長など |
---|---|---|
高純度試薬調整、一般分析 | Millipak Express | 0.22µm メンブレンフィルター(PES膜)で低溶出、高流量 |
細胞培養・遺伝子実験 | BioPak | 限外ろ過膜、バイオ系の用途に広く適応 |
HPLC、LC/MS | LC-Pak | C18逆相シリカ、ODSカラムと同じ素材 |
環境分析・ダイオキシン分析 | EDS-Pak | 高純度活性炭、4成分の試験報告書付き |
ICP-MS、半導体洗浄 | Q-POD Element | イオン交換樹脂+0.1µmフィルターで極限まで金属除去 |
PES膜は水が入る側(一時側)の孔径が大きく、出る側(二次側)の孔径が小さい非対称膜になっています。
Millipak ExpressはMillipakの約半分の膜面積で同じくらいのスピードで採水ができるので、採水速度の速いミリQでもフィルターの大きさをそれほど変えなくてよくなりました。また、大きめの粒子は膜表面近く、小さい粒子は膜内部で捕捉するので目詰りしにくいというメリットもあります。
一見するとわからない部分にも、性能をより高めるための技術が取り入れられているのです。
次回は別のPOUについて紹介します。
Bio Pakの場合は、図1のように中空糸の束を逆U字に曲げ、糸の末端がすべて片方の面にくるようにします。そして図2のように中空糸膜の外側から水が入り、中空糸の内側からエンドトキシンやRNaseなどが除去された水が出てくるのです。
このようにして漏れなくきちんとろ過された超純水を採水するため、膜の性質だけではなく形状、成型方法などが工夫され安心できる水質が保たれているのです。
» アミコンウルトラについては、こちらを参照ください。
次回もPOUのちょっとカタログにはない情報をご紹介します。
そこで登場するのが、ミリQ水をもう1度イオン除去するカートリッジにかけてきれいにした極微量分析用ミリQ水です。
超純水カートリッジがイオン交換樹脂と活性炭のミックスで無機イオンと有機物を効果的に除去するのに対し、このカートリッジQ-POD Elementはイオン交換樹脂だけが入っていて無機イオンだけをさらに除去する役割のみを担います。
さらに最終フィルター自身にもイオンの吸着能力を持たせてあり、とことん無機物を除去します。また、超純水装置自身からの僅かな溶出も避けるために流路中の弁の部材にまでこだわっています。
この性能を持つMilli-Q ElementやMilli-Q Integral 微量元素分析タイプは、無機分析用としてはミリQの中のミリQといってもいいかもしれません。
ただし水がきれいなだけでは分析はうまくいきません。室内環境や人からの混入の要因が無視できないからです。
ですから使用環境としてはクリーンルームなど汚染源がない(少ない)ことや肌の露出がない装具で操作が求められるのです。極微量分析では、特に注意が必要となります。
目的に応じて極限まで精製するのがPOUの役割ですが、この部分を必要に応じて増やしたり換えたりできるのが、現在のミリQの大きな特長です。
次回は別の精製用POUを紹介します。
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