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意外と知らない!消耗品
消耗品、なんで交換するの?


純水装置・超純水装置には様々なカートリッジやフィルターが使用されており、適宜交換していただいていると思います。 しかし、 なぜ交換する必要があるか、 ご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、 純水・超純水装置の消耗品・ カートリッジについて正しい知識を知っていただき、より質のいい純水・超純水をご利用いただきたいという思いから、消耗 品の役割や交換の重要性などを解説します。




1. プロガードプレフィルター

純水精製段階の最初に使用されるプロガードプレフィルターについて解説します。

プロガードプレフィルタープロガードプレフィルターPROGARDは、
P = プレ(Pre)、前で
RO = RO膜を
GARD = ガード、守る
つまり、前でRO膜を守るために使われている前処理フィルターです。

プロガードプレフィルターは粒状銀添活性炭と0.5μmのプレフィルター、スケーリング防止剤(ポリフォスフェイト)を内蔵したカートリッジです。活性炭に銀を添加することで、塩素を除去するとともに微生物の増殖を抑制しています。0.5μmのプレフィルターは原水中に含まれる微粒子を除去し、スケーリング防止剤は後段のRO膜のスケーリングを防止し、RO膜の除去性能を高めるとともにRO膜の寿命を延ばすために使用されています。
プレフィルターは通水量に伴い、微粒子がフィルター上に蓄積し、目詰まりを生じます。プレフィルターが目詰まると、水が流れなくなるため装置が停止する可能性があります。
活性炭は銀を添加することで、塩素を除去するとともに微生物の増殖を抑制しています。活性炭が飽和すると、後段のRO膜が塩素によって化学的劣化を引き起こし、RO膜早期劣化の原因となります。
スケーリング防止剤としてはポリフォスフェイトという薬剤が使われています。ポリフォスフェイトは一度水を流すと使用量に関係なく、最長6か月程度ですべてが溶けてしまい、スケーリングを防止できなくなります。そのため長期間使用し続けますと逆浸透膜表面でカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が目詰まりを起こさせてしまいます。その結果、比較的高単価である逆浸透膜を早期に交換する必要性が出てきてしまいます。
以上のようにプロガードプレフィルターは多くの機能を有しており、定期的な交換は水質の維持だけではなく、装置の不具合の可能性の低減にも寄与します。

» さらに詳細なプレフィルターの解説については、超純水・純水の技術解説のプレフィルターをご覧ください。

是非、消耗品・カートリッジを正しくご理解・ご使用いただき、質のいい純水・超純水を精製してください。<br/ >超純水の精製方法や各精製方法の詳細については、超純水・純水の技術解説をご参照ください。


2. RO(逆浸透)膜

純水精製段階で使用されているRO(逆浸透)膜について解説します。

RO膜

ろ過による目詰まりを防ぐために、水はRO膜と平行に流します。これをタンジェンシャルフローと呼びます。RO膜を透過する水の割合を1とすると、濃縮された排水は5~10の割合で運転します。

RO膜は水中に含まれる4種類の不純物(無機物、有機物、微粒子、微生物)を90-99%程度まんべんなく除去できる効果的な方法です。イオン交換樹脂などのように通水量による劣化はありませんが、運転時間の経過とともに膜の性能は低下する傾向にあります。RO膜の性能低下には、RO膜が劣化することによる不純物除去率の低下と、RO膜表面に不純物が付着することによる透過水量の低下との2種類があります。
メルクの純水装置の場合は、後者は塩素タブレットによる洗浄により透過水量の回復が見られることもありますが、前者の膜自身の性能低下を回復させることは困難です。この膜自身の性能低下の原因としては、塩素による膜表面の化学的劣化、微生物や異物による膜面の損傷などがあります。

経年劣化により、RO膜における不純物の除去率の低下がおこると、RO水中の不純物量が増加し、後段のEDIモジュールに高負荷をかけることになります。RO水の水質が低下したとしてもEDIモジュールが機能しますので、見た目上は純水(Elix水)の水質は大きくは低下しません。しかし、この状態が続きますとEDIモジュールの性能低下が起こり、純水(Elix水)水質の低下や本来交換不要であるEDI不具合の原因となります。また、RO膜の性能は導電率計を用いて不純物の除去率で判定しています。前述のRO膜表面の不純物の付着に関しては、導電率計では判定できないため、定期的な交換が必要となります。

RO膜の定期的な交換は水質の維持だけではなく、装置の不具合の可能性の低減にも寄与します。


3. エアベントフィルター

純水を貯留しているタンクで外気由来の汚染を防ぐために用いられているエアベントフィルターについて解説します。

エアベントフィルター純水・超純水製造装置では、超純水を作るスピードと比較し、純水を作るスピードが遅いため、純水を一時貯留するためのタンクが必要となります。タンクは密閉状態を保たれていることが望ましいですが、タンクに水が出入りする際、大気とタンク内の圧力を等しくするために開放部分が必要となります。タンク内の水を使用すると、水量が減少し、同量の空気がタンクの中に入ります。研究室の空気には純水の水質低下を引き起こす二酸化炭素、微生物などが存在し、また揮発性有機化合物(VOC)が含まれることもあります。タンク内の純水に空気中の炭酸ガスが溶解すると重炭酸イオンとして存在し、比抵抗を大幅に減少させ、超純水装置における陰イオン交換樹脂への負荷量を増大させ、寿命にも影響を及ぼします。また、微生物や有機物が混入すると、純水がこれらにより汚染されます。そこで、タンクには外気からの汚染を防ぐためのエアベントフィルター(人間のマスクのようなものです)が必要です。


最近は人間のマスクの種類も増えていますが、エアベントフィルターの種類も様々です。Milli-Q やElix で使用しているエアベントフィルターは図のように三層構造になっており、空気中の不純物を確実に除去することができます。最もシンプルなエアベントフィルターはメンブレンフィルターだけで構成されており、微粒子・微生物しか除去できず、二酸化炭素や有機物はタンクの中の純水に混入する危険があることに注意が必要です。
エアベントフィルターが劣化し、活性炭やソーダライムでの不純物除去効率が低下すると、タンク内の純水に二酸化炭素や有機物が混入することになりますので、タンク内純水の水質が劣化したり、超純水カートリッジへの負荷が増え、超純水の水質が低下する可能性があります。また、メンブレンフィルターが目詰まると、タンクに空気が入りにくくなり、結果的に超純水装置から出る水の量が減ることもあります。さらに目詰まりが進むと、空気がまったく入ってこれず、タンクがつぶれることもあります。そのため、エアベントフィルターも定期的な交換が必要となるのです。

エアベントフィルター以外のフィルターやカートリッジ類は水と接しているのに対し、エアベントフィルターは水と接しておらず、また目につきにくいタンク上部に設置されているため、定期的に消耗品の交換をされている方でも意外と交換を忘れてしまうこともあります。エアベントフィルターが定期的に交換されているかチェックしてみてください。


» エアベントフィルターの効果の詳細データに関しては、 R&D Notebook vol.4 超純水システムにおける純水貯留用タンクの最適化(PDF) をご覧ください。


4. タンク内殺菌用UVランプ

純水を貯留しているタンクで菌の増殖を抑制するために用いられている殺菌用UVランプ(波長254nm)について解説します。

紫外線照射純水・超純水製造装置では、純水装置の精製速度が遅いため、純水を一時貯留するためのタンクが必要となります。しかし、純水をタンクにためることにより、純水中の微生物が増殖することが危惧されます。純水中にはほとんど栄養成分がないため、微生物の増殖は起こらないと捉えられることもありますが、貧栄養環境を好む微生物も存在しており、純水・超純水製造装置においても微生物の殺菌を行う必要があります。
タンク内の純水が微生物汚染を受けると、後段の超純水精製過程に影響を及ぼす場合もあります。純水装置での微生物の殺菌にはUVランプ(波長254nm)が用いられます。タンク殺菌用のUVランプは標準使用条件下では1日1回10分間点灯します。UVランプの照射強度は使用に伴い徐々に劣化し、それに伴い殺菌効果が低くなり、微生物の増殖を抑制することが困難となってしまいますので、定期的な交換を実施することで殺菌効果を持続することが可能です。

タンク内微生物数尚、メルクの純水装置では、以前の機種(Elix/Elix UVなど)の交換頻度は1年間に1回を推奨しておりましたが、多くの現行販売している機種(Milli-Q Integral/Elix Advantage/Elix Essential)のタンク用殺菌灯ユニットでは、UV点灯回路の改良により、UVランプの寿命を2倍の2年に伸ばすことができました。


» 超純水と純水についてもう少し詳しく知りたくなったら、 超純水と純水の定義 をご覧ください。

» 超純水と純水の精製技術については、超純水・純水の技術解説をご覧ください。


5. 有機物酸化分解用UVランプ

有機物酸化分解用UVランプ

超純水の残存有機物量を減らすために用いられている有機物酸化分解用UV ランプ(波長185/254nm,172nm)について紹介します。


従来、超純水中の有機物除去のためには活性炭が用いられていました。活性炭も有機物の除去に効果的ですが、近年は有機物酸化分解用UVランプを併用し、有機物をさらに低減する方式が一般的です。UVランプによる有機物酸化分解は有効な方法ですが、UVランプは使用時間の経過に伴い照度が低下します。UVランプの照度が低下すると、有機物酸化分解の効果が弱まり、結果として超純水中の有機物濃度(TOC)が上昇するリスクがあるため、使用時間によって定期的な交換をお薦めしています。

有機物酸化分解用UVランプ「あまり超純水を使用していないので、UVランプは劣化していないのでは?」という質問をいただくこともありますが、ほとんどの超純水装置は水質を維持するための自動循環機能を有しており、たとえばMilli-Q Integral の場合は1 時間に1 回5 分間装置が稼働します。そのたびにUV ランプも点灯します。UV ランプは点灯し続けている場合よりも点灯の始動時にフィラメントに負担がかかり消耗します(蛍光灯も同じですね)。超純水装置ののように点灯と停止を頻繁に繰り返す場合、UVランプの性能は使用時間分以上に劣化するため定期的な交換が必要になります。

メルクの以前の超純水装置(Milli-Q Gradientなど)では、UVランプの交換頻度は1年に1回を推奨していましたが、現在販売している機種(Milli-Q IQ 7000/Integral/Advantage/Reference/Direct)では、UV点灯回路の改良により、UVランプの寿命を2倍の2年に伸ばすことができました。


» 超純水と純水についてもう少し詳しく知りたくなったら、 超純水と純水の定義 をご覧ください。

» 超純水と純水の精製技術については、超純水・純水の技術解説をご覧ください。


6. 超純水装置で使用されているカートリッジ

超純水装置で使用されているカートリッジ(代表的な製品名:Qガードカートリッジ、クォンタムカートリッジ、IPAK METAカートリッジ、IPAK QUANTAカートリッジ、SmartPak、SimpliPak、SynergyPak)について紹介します。

Merck-JP:/01_JP_Image/JP_FreeStyle/JP_LW/JP_LW-LC-Water_Purification/JP_lw-LC-Learning/consum_1_a.png超純水カートリッジの中身はイオン交換樹脂と活性炭です。イオン交換樹脂はイオンを、活性炭は有機物を除去し、比抵抗18.2M Ω ・cm、TOC 5ppb 以下の超純水を作り出している超純水装置の心臓部ともいえる重要部分です。
イオン交換樹脂が劣化するとイオンが除去できなくなり、活性炭が劣化すると有機物が除去できなくなり、求める水質の超純水ができなくなってしまいます。そのため、超純水カートリッジの交換は必要なのです。

» 超純水と純水についてもう少し詳しく知りたくなったら、 超純水と純水の定義 をご覧ください。

» 超純水と純水の精製技術については、超純水・純水の技術解説をご覧ください。


7. TOC測定用A10 UVランプ

超純水のTOCを測定するために用いられているA10 UVランプ(波長185/254nm, 172nm)についてご説明します。

A10 UVランプ従来、超純水の水質管理には比抵抗値(単位:MΩ・cm)が使われてきました。比抵抗値は超純水中のイオン量の管理には優れていますが、有機物濃度との相関がないという問題点がありました。そこで、メルクでは1996年にMilli-QにTOC計の標準搭載を始めました。超純水のTOCを管理することで、より水質の安定したMilli-Q水を試験研究に利用できるようになったのです。A10 TOC計では、超純水に182/254nm, 172nmのUV照射を行い、有機物の完全酸化分解を行うことでΔCから超純水のTOC値を測定しています。
A10 TOC計では基本的に有機物が完全に酸化分解されるまでUV照射を続けますが、UVランプは使用時間の経過に伴い照度が低下し、有機物酸化分解能力が低下してきます。もし超純水中に高濃度の有機物が存在していたとしても酸化分解能力が不十分だと、超純水中のTOC値があたかも低いような値を示してしまうことも考えられます。たとえば、A10 UVランプが切れてしまうと、有機物の酸化分解ができない状態になり、導電率の変化がないためTOCが1ppb(=もっともきれい)を表示します。現行のMilli-Qでは導電率変化が少なくTOC測定に時間がかかりすぎた場合やUVランプが切れた場合にはエラー表示でお知らせしますが、超純水中の真のTOC値を得るために、UVランプの設計データに基づき1年毎の定期交換が必要です。

あまり超純水を使用していないので、A10 UVランプは劣化していないのでは?とご質問いただくこともありますが、ほとんどの超純水装置は水質を維持するための自動循環機能を有しており、1時間に1回装置が稼働し、そのたびにTOC測定も行われます。UVランプは点灯し続けている場合よりも点灯の始動時にフィラメントに負担がかかり、消耗します(蛍光灯も同じですね)。A10 TOC計のUVランプのように点灯と停止を頻繁に繰り返す場合、UVランプの性能は使用時間分以上に劣化するため定期的な交換が必要になります。また、前号では超純水精製用のUVランプが劣化すると超純水中の有機物濃度が上昇する危険性をご説明しましたが、超純水精製用のUVランプとTOC測定用A10 UVランプと両方を交換しないと、精製された超純水のTOCは上昇しているのに、測定されたTOCは低く表示されるという水質管理上のリスクがありますので、UVランプの定期交換は必要なのです。計測は正しい値を測定できてはじめて、“意味がある”値となります。


» 超純水と純水についてもう少し詳しく知りたくなったら、 超純水と純水の定義 をご覧ください。

» 超純水と純水の精製技術については、超純水・純水の技術解説をご覧ください。


8. 超純水装置の最終フィルター

超純水装置の最後についている最終フィルターについて紹介します。

最終フィルター現在、超純水装置の最終フィルターはMillipak、Biopak、LC-Pak、EDS-Pak、Optimizer の5種類です。
最終フィルターは種類によって微粒子、微生物、環境ホルモン物質、エンドトキシン、RNase、DNaseなどを除去しています。また、装置内部からのイオン交換樹脂や活性炭などの混入や、外気から装置内部への汚染を防ぐ役割も果たしています。
最終フィルターがメンブレンフィルター・限外ろ過膜のようなフィルターの場合には、フィルター上に不純物が蓄積されます。そのため、長期間の使用により堆積した不純物が増加すると、精製された超純水が汚染されたり、フィルターが目詰まりをして採水量を低下させる要因ともなります。
Merck-JP:/01_JP_Image/JP_FreeStyle/JP_LW/JP_LW-LC-Water_Purification/JP_lw-LC-Learning/consum_2_c.jpg最終フィルターがC18逆相シリカや活性炭のように吸着により不純物を除去する場合には、通水量により劣化し対象物質が除去できなくなり、求める水質の超純水ができなくなってしまいます。また、最終フィルターは超純水システムの消耗品類の中で唯一、外気と直接接触しています。そのためフィルター自体のろ過・吸着能力とは別にコンタミネーションのリスク回避のために定期交換が必要となります。
最終フィルターの用途

» 超純水と純水についてもう少し詳しく知りたくなったら、 超純水と純水の定義 をご覧ください。

» 超純水と純水の精製技術については、超純水・純水の技術解説をご覧ください。




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