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限外ろ過は、タンパク質の濃縮に不可欠な技術として知られていますが、脱塩やバッファー交換など、透析法により実施される事が多い実験手法の代替法としても有用です。限外ろ過は透析と比較すると処理時間が極めて短いという特長を持ちます。ここでは、限外ろ過を用いたバッファー交換についてご紹介します。
限外ろ過膜を用いた脱塩やバッファー交換はダイアフィルトレーションと呼ばれます。ダイアフィルトレーションとは、ろ過と同じペースで溶媒がろ液側に移動し、溶液中から低分子がコンスタントに除去されていく(高分子が相対的に濃縮されていく)、高分子精製のためのろ過方式です。ラージスケールのろ過系で実施するダイアフィルトレーションでは、タンジェンシャルフローろ過(TFF)を採用した循環式ろ過が一般的です。一方、スモールスケールの系ではあらかじめ溶液に置換対象のバッファーを加えて希釈したサンプルを遠心式フィルターユニットなどでろ過します。
限外ろ過によるダイアフィルトレーションの様式は表1のように分類されます。サンプルの量や性質に応じて適したろ過様式が異なるため、選択の参考にしてください。ダイアフィルトレーションでは、保持したい高分子と除去したい低分子のサイズに十分な差があることが必要です。大まかな目安は分子量で10倍以上のサイズ差です。そのため、ダイアフィルトレーションでは、ろ過の前後でバッファー組成に変化はなく、変化するのは高分子画分の濃度のみです。たとえば塩濃度100mMのバッファーは、遠心後も100mMの塩を含んだままです。
遠心式限外ろ過デバイスを使用する非連続的ダイアフィルトレーションでは、限外ろ過によって濃縮された高分子を含む溶液を置換対象のバッファーで希釈後に再び限外ろ過を実施することでバッファー交換が進みます。
例えば、100mMの塩を含むサンプル 4,000 μLを、アミコンウルトラ(Amicon Ultra)で50μL(80倍)に濃縮後に水 3,950μLで希釈し、再び限外ろ過を実施して50μLに濃縮した場合、塩濃度は 1/80 の 1.25 mM となります。同じ工程を繰り返せば、初期濃度の1/6400(1/80×1/80)倍である0.015625mMとなります。以上のような遠心と希釈の繰り返しによって、完全に塩の除去が可能です。
限外ろ過時には、このミセルは分子量70~90 kDaの球状タンパク質に近い挙動を示します。ミセル形成したTriton X-100は、その90%以上が限外ろ過膜に保持されます。CMCを超えるTriton X-100を除去するには、NMWLが100 kDa以上の限外ろ過膜を選択する必要があります。
界面活性剤ミセルと目的高分子の分子量に十分な差がない場合や、目的成分よりも界面活性剤ミセルの分子量が大きい場合には、限外ろ過膜による界面活性剤の分離が困難になるため、界面活性剤をモノマー化しなければなりません。ミセル形成後の界面活性剤をモノマー化するためには、CMCの1/10程度の濃度まで希釈することが推奨されます。
遠心型デバイスを使用して界面活性剤を除去する場合は、合計3~5回の限外ろ過を繰り返すことで、十分に界面活性剤を除去可能です。
精製とダイアフィルトレーションを同時に実施する実験系のために最適化されているAmicon Proは、遠心と希釈の繰り返し回数を減らすことができるツールです。限外ろ過デバイス上部にファネルが付属した構造になっており、遠心力が働くと上部のバッファーが下部の限外ろ過デバイスに補充されるため、連続的ダイアフィルトレーションに近い限外ろ過が実現します。たった一度の遠心ろ過によって、99%以上のバッファーを交換することが可能です。
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