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復習しませんか 2
バッファーの基礎知識(2) 使用上の前提と注意点


およそすべての生体内作用は pH依存性です。たとえわずかでも、pHの変化は代謝性アシドーシスやアルカローシスの原因となり、代謝不全が発生します。バッファーは生体内において、pHを極めて狭い範囲内に保ち、細胞内外の影響により生じるpHの変化を最小限に抑える抵抗系として機能することで、代謝を正常に進行させます。

細胞と組織における緩衝作用

バッファーが生物体内において重要である事は皆さんよくご存じのとおりです。
そこで質問です:細胞内で緩衝作用を発揮する主要な分子の正体をご存知でしょうか?

生体内における緩衝作用は、水素イオン濃度を一定範囲に保つために極めて重要です。タンパク質を構成しているアミノ酸の側鎖は、その種類に応じて弱酸や弱塩基として機能する官能基を含んでいます。また、核酸も、リン酸基、糖、塩基それぞれにイオン化できる官能基を持っており、緩衝作用を発揮する分子です。その他の低分子も含めると、電離できるおよそすべての生体内分子が緩衝作用を発揮します。

さて、先ほどの質問の答えの前に、生体内の緩衝系を分類してみましょう。生体内緩衝系は重要と考えられる順に大きく4 種類に分類できます。
1.重炭酸緩衝系(HCO3-
2.リン酸緩衝系(HPO42-
3.ヘモグロビン緩衝系
4.血漿タンパク質緩衝系
それらの中で、我々の生体内において最も重要な緩衝系は、体液を緩衝する重炭酸イオン系です。また、細胞内は細胞外と比較してリン酸濃度が高く保たれており、リン酸緩衝系が非常に重要です。したがって、「細胞内で」緩衝作用を発揮する主要分子は「リン酸化物イオン」となります。

ここで、陸生の動物(特にヒト)体内で最も重要と紹介される事が多い重炭酸緩衝系について触れておきます。重炭酸緩衝系では老廃物としてのCO2の排出と緩衝機能が密接に相関しています。緩衝作用を持つ通常の分子はその形態を変化させることはできませんが、重炭酸イオンは生体内のpHが低くなると次式の平衡が右に傾き、CO2と水として緩衝系から除去されるという、他の分子にはない特性があります(図1)。

式

陸生の動物は二酸化炭素が持つこの特別な性質をうまく利用して、生体内のpHを調節しているのです。

図1
図1 重炭酸イオン緩衝系と二酸化炭素を結ぶ生体内と生体外の系

生物学実験用バッファーが満たすべき要件

ライフサイエンス研究のために用いるバッファーは以下の一般的基準を満たす必要があります。また表1には、バッファーを使用しない方がよい代表的な例をまとめました。ぜひ参考にしてください。

  1. pKa:6.0 ~ 8.0
  2. 水に対する溶解度が高く、有機溶媒に対する溶解度は低い
  3. 細胞膜を透過しない
  4. 細胞毒性がない
  5. 生体内作用に干渉しない
  6. 必要なときは塩を添加可能
  7. イオン濃度と温度から受ける影響が低い
  8. 酵素に対して安定で分解されない
  9. 可視光ならびに紫外線を吸収しない(光化学反応性が低い)

表1
表1 各バッファーが適さない代表的なアプリケーション



バッファーの基礎知識(1) pHとpKaへ




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