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質量分析のサンプル調製

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マススペクトルを改善するための
簡単な5つの方法

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Merck:/Freestyle/BI-Bioscience/Chromatography-Sample-Prep/chromatography-sample-prep-images/mass-spec-cover-80px.jpg質量分析向けサンプル調製カタログ 

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質量分析法(MS)は、プロテオミクス研究から環境分析まで多岐にわたる用途で、複雑な混合物の定性・定量に用いられている有益な分析法です。質量分析で最良の結果を得るためには、汚染を避けてサンプルが複雑化するのを抑えるための極めて慎重なサンプル調製が必要です。メルクミリポアは、MSとLC-MSの移動相、特にゲル電気泳動試薬を精製するために、マイレクスシリンジフィルター、メンブレンディスク、フィルターホルダーを提供しています。また、ZipTipピペットチップもご用意しております。
  • 質量分析サンプル用のマイレクスシリンジフィルター
  • ZipTipピペットチップ
  • Samplicityろ過システム

MS対応マイレクスLCRシリンジフィルター:他ブランドと比較して少量の抽出物

マイレクスLCRフィルターを使用することで、サンプル調製用の機器から混入する不純物の干渉を最小限に抑えられるので、夾雑物を含まないLC-MS用のサンプルが得られます。MS対応の親水性ポリテトラフロロエチレン(PTFE)製マイレクスLCRフィルターが、質量分析での抽出可能な不純物を最低限に抑えることが示されています。

Millex LCR フィルターに関する詳細はこちら

Mass spec compatible syringe filters.
マイレクスシリンジフィルターは、他社製よりも不純物量を抑えることができます。マイレクスシリンジフィルターを使ってサンプルをろ過すれば、マススペクトル内に不純物由来のピークが現れるのを最低限に抑えられます。

Zip tip pipette tips.

ZipTipピペットチップ:数秒間でプロテオミクスサンプル調製

様々な質量分析ラボで使われているZipTipは10μLのピペットチップで、その先端には固定された0.6μLまたは0.2μLベッドのクロマトグラフィー担体があり、デッドボリュームがありません。質量分析、HPLCおよびキャピラリー電気泳動を行う前に、数秒間でペプチドまたはタンパク質を濃縮・精製できます。ZipTipピペットチップを用いることで、フェムトモルのものからピコモルのものまで、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドを濃縮・精製し、さらには分画の再現性のある高回収率が可能となり、データ品質を向上させることができます。
ZipTipの利点:
  • 単一ステップで脱塩、濃縮および精製
  • より有益なデータを得るために、複雑なサンプルを分画
  • ペプチド、タンパク質、核酸等に最適
  • デッドボリュームがなく最大回収率を実現
  • 時間のかかるクロマトグラフィーが不要
ZipTipに関する詳細はこちら
ZipTip® advantages for mass spec.

マススペクトルの改善に適したフィルターを選択するための5つの簡単な方法

サンプルをメンブレンろ過すれば、マススペクトルの感度と再現性を改善することができます。質量分析を行うサンプルに適したシリンジフィルターを選択する5つの簡単な方法とは、サンプルボリューム、化学適合性、粒子負荷量、抽出物特性、対象成分の吸着を検討することです。

1. 正しいサイズのフィルターを選択

通常は様々な内径のフィルター(4 mm~50 mm)があります。
径の大きいフィルターの利点:
  • スピーディなろ過。
  • ろ過に要する圧力が低く、バーストの確率も最低限に抑えられます。
径の大きいフィルターの欠点:
  • サンプルのホールドアップ体積がより大きいので、貴重なサンプルボリュームの損失になることがあります。
  • 対象成分がフィルターに吸着し、サンプルの精度が低くなる可能性があります。
  • 抽出可能な不純物の量が増加し、サンプルを汚染します。
理想的なフィルターサイズは、ろ過性能と汚染や成分吸着のリスクのバランスが良いものです。サンプルの容量にも依存します。以下の表を用いて、サンプル容量に対応したふさわしいフィルターサイズを選択してください。
サンプルボリュームと適合するフィルターサイズ

サンプル容量
フィルターサイズ
ホールドアップ体積
ろ過面積
< 1 mL 4 mm 10 µL 0.1 cm2
1~10 mL 13 mm 25 µL 0.65 cm2
10~100 mL 25 mm 100 µL 3.6 cm2
10~100 mL 33 mm 80 µL 4.5 cm2
サンプル量が多いですか?
多数のサンプルを調製する際に、シリンジフィルターまたは限外ろ過膜を用いて1回に1つのサンプルをろ過していては、非常に時間がかかってしまいます。そこで、マルチウェルフィルタープレートをぜひお試しください!1回に96または384サンプルを回収プレート内にろ過し、それをLC-MSシステム上で直接分析します。

2. 化学的に適合するフィルターを選択

メンブレンまたはハウジングの材質がサンプルと適合しないフィルターを用いると、ろ過が不完全となり、不純物がサンプル中に抽出され、さらにはメンブレンが完全に分解してしまうおそれがあります。下表は、一般的なフィルターメンブレンとハウジングの材質の化学適合性のチャート化です。適切に選択してください。

様々なメンブレンおよびハウジング材の化学的適合性
(E = 優、G = 良、P = 可、N = データ無し)

極性有機溶媒
塩基性水溶液
塩溶液
界面活性剤
ACN MeOH EtOH 3N NaOH NH4OH Na2CO3溶液 1N
HCI 
海水 SDS Tween 20
ハウジングの材質
HDPE E E E E E P E E P P
PP E E E E P E E E N N
メンブレン
PTFE E E E E E E E E N E
PVDF G E E E E E E E N P
ナイロン E G E E P E E E N P
PES P E E E P N E N N N

抽出物特性が低くても、マススペクトルに干渉する可能性があります
ポリプロピレン(PP)フィルターを用いることにより抽出可能な物質を少なく抑えられても、例えば、溶出物質に起因する軽微な汚染ピークがマススペクトルに干渉する可能性があります。左図と右図を比べてください。


(左図)質量分析法によるポリプロピレンシリンジフィルター(0.45 µm)の抽出物特性プロファイル。(右図)質量分析法による親水性フィルター(0.45 µm)の抽出物特性プロファイル。クリックして拡大する。

アセトニトリルをシリンジフィルターでろ過し、透過液の最初の1mLを採取しました。この透過液をAPI2000に流速20µl/分で15分間注入しました。総イオン電流および平均マススペクトルを、ESI + モードを使用し100~1000のM/Z 範囲で測定しました。

3. 高密度粒子負荷または粘度の高いサンプルにプレフィルターを使用

Merck:/Freestyle/BI-Bioscience/Chromatography-Sample-Prep/chromatography-sample-prep-images/prefilters_mass_spectra.jpg
様々な溶液を、メンブレン単独か、メンブレン+グラスファイバー製プレフィルターを装備するシリンジフィルターを使って、フィルターが目詰まりするまでろ過しました。結果を3回測定の平均値として報告しました。クリックして拡大
サンプルが通過可能となる前に、単一メンブレンフィルターが目詰まりを起こす場合には、プレフィルターを装備したシリンジフィルターを使用します。プレフィルターは、径の大きな微粒子をトラップするのに有用で、最終メンブレンをファウリングから保護し、フィルターが目詰まりするまでにより多くのサンプルをろ過できるようにします。多層式フィルターを用いれば、メンブレン単独フィルターよりも4~6倍多い容量をフィルター処理することができます(下表を参照)。
プレフィルターの注意事項
プレフィルターを採用する前に、プレフィルターが通常グラスファイバーからできており、抽出物濃度または対象成分の吸着量が高まるおそれがあることに留意してください。そのような場合には、不活性/低タンパク質吸着性のフィルターおよびプレフィルターを備えるフィルターを使ってサンプルをろ過する方が適切です。

4. 低アナライト吸着性フィルターを選択

Merck:/Freestyle/BI-Bioscience/Chromatography-Sample-Prep/chromatography-sample-prep-images/filter_low_analytebinding.jpg
A comparative study of protein binding was done on various 0.2 µm membranes. 1 mg/ mL solution of 125I labeled IgG was offered to 13 mm membrane discs. After incubation, bound protein was determined. Click to enlarge.
シリンジフィルター内のメンブレンは、対象成分の化学的性質に応じて非特異的に結合して、特に低濃度のサンプルでは不正確で再現性のない結果を生み出すおそれがあります。グラスファイバー製のフィルターは、特にタンパク質、ペプチドおよびオリゴヌクレオチドと強く結合する傾向があります。下記の図は、ナイロンメンブレンは、タンパク質結合性が非常に高く(~225 µg/cm2)、一方ポリビニリデンフロライド(PVDF)は、タンパク質結合性が非常に低い(~15 µg/cm2)ことを示しています。

5. 抽出物による汚染を最低限に抑えるために、溶媒でフィルターを洗浄

Merck:/Freestyle/BI-Bioscience/Chromatography-Sample-Prep/chromatography-sample-prep-images/effect_of_rising_extractables.jpg
様々なシリンジフィルターを1.0 mLの抽出溶媒で洗浄して、その後に透過液1 mLを採取し、逆相HPLCを用いて分析しました。クリックして拡大
抽出可能な物質がダウンストリーム分析で問題を惹起する場合もありますが、ろ過前にメンブレンフィルターをサンプルまたは溶媒で洗浄すれば、そのような問題を大幅に抑えることができます。下図は、フィルターの事前洗浄が抽出可能な物質に与える効果を示しています。メンブレンを1 mLの溶媒で洗浄するだけで、LC-UVによる検出が不能になるレベルまで抽出可能な物質が低減しました。