齋藤 俊介 氏

株式会社シンプロジェン 取締役 医療ビジネスユニット ユニット長

国内における遺伝子治療用製品の開発・製造プラットフォームの構築に向けた取り組み ~遺伝子治療バイオファウンドリ®・サービスへの展開~

発表要旨

遺伝子治療は、体内または細胞内で遺伝子を発現させることによって治療効果を生むモダリティであり、次世代のバイオ医薬品として非常に注目を集めている。遺伝子治療には体内へ遺伝子を運ぶベクターが必要となるが、近年ではAAV(アデノ随伴ウイルス)ベクター等のウイルスベクターが広く遺伝子治療に利用されている。

遺伝子治療の臨床試験は、欧米諸国や中国で盛んに行われている。これらの国々と比較して、日本における遺伝子治療の開発は非常に遅れているが、その要因一つとして国内でウイルスベクターの開発・製造基盤が十分に整備されていない状況が挙げられる。特に、in vivo遺伝子治療を中心に利用されるAAVベクターは、複数のプラスミドDNAを動物細胞にトランスフェクションすることで一過性発現により製造されるが、世界的な課題として、高額な製造コストや品質の改善に多くの大学や企業が取り組んでいる。

株式会社シンプロジェンは、2017年に設立した神戸大学発のスタートアップであり、遺伝子治療用製品(ここでは、広義にmRNAも含む)に特化したモノづくりのプラットフォーマー(遺伝子治療バイオファウンドリ®)を目指し、研究開発と事業開発を進めている。原料となるプラスミドDNAの配列情報によってウイルスベクターの機能性(有効性、安全性、製造性)は決定されるため、プラスミドDNAはウイルスベクターのCQA(Critical Quality Attribute)に関係する非常に重要な製造原料となる。当社は、OGAB®法という独自のDNA合成技術を保有しており、従来技術では合成が難しい複雑なDNAを合成することが可能である。DNA合成の強みを活かし、当社はAAVベクターの製造性や品質を改善できる新しいDNAの開発を進めている。  本講演では、当社が開発を進めるAAVベクター製造用のDNAの設計・開発からバイオリアクターを用いたAAVベクター製造プロセスのスケールアップまで、当社が遺伝子治療バイオファウンドリ®として構築を進めるプラットフォーム技術について紹介する。

プロフィール

2009年に大日本住友製薬株式会社(現 住友ファーマ株式会社)に入社。技術研究本部 製剤研究所および同社海外子会社Sunovion Pharmaceuticals Inc.にて、無菌製剤を中心とした製剤開発業務に従事。米国から帰任後は、新しいモダリティや新製剤技術に関する研究および企画立案業務に従事した。2020年に株式会社シンプロジェンに入社し、事業開発のマネージャーとして遺伝子治療に関するビジネスの立ち上げを進めた。2021年より執行役員 医療ビジネスユニット長に就任し、2023年より現職。2023年に、神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科 博士後期課程修了 博士(科学技術イノベーション)。