小野寺 雅史 氏

国立成育医療研究センター 遺伝子細胞治療推進センター センター長

我が国の遺伝子治療の課題とその解決策~製造・規制に主軸を置いた新たな展開~

発表要旨

現在、難治性疾患に対する遺伝子細胞治療はその商品化に向けた開発が加速度的に行われ、先進国に限っても製造販売承認された製品はin vivo遺伝子治療で13製品、CAR-T細胞療法を含めたex vivo遺伝子治療で13製品を数える。特に、新規モダリティとして脂質ナノ粒子等を用いたゲノム編集技術やmRNAの最適化がなされ、ヒトへの応用が可能となり、その臨床開発が急速に進んでいる。一方、これら製品の多くは海外で開発されたもので、国内で開発された遺伝子治療用製品は慢性動脈閉塞症に対するコラテジュエン®と悪性神経膠腫に対するデリタクト®の条件期限付き承認2製品のみである。

演者は長い間、遺伝子治療に関わってきた。そして、これまでの流れを振り返った時、国内の遺伝子治療は何とか患者を治したい医師の個人的努力に支えられたもので、欧米のように国を挙げて遺伝子治療を包括的に実施する体制構築を目指したものでは無かった。

今、我が国の遺伝子細胞治療実用化に何が必要であろう?本セミナーでは、遺伝子治療製品の製造・品質・臨床での取扱いに関する国内外の情報や規制を取り上げ、日本においてCDMO、製薬企業、臨床サイドが有機的に連携し、着実に遺伝子細胞治療を実施できる体制整備について議論する。

プロフィール

1986年 北海道大学医学部卒。小児科医として勤務した後、1994年より米国国立衛生研究所Clinical Gene Therapy Branch(R.M. Blaease博士)に留学。帰国後、筑波大学血液内科講師を経て2008年より国立成育医療研究センター研究所成育遺伝に赴任。2019年、同センター遺伝子細胞治療推進センター センター長を拝命、現在に至っている。これまで原発性免疫不全症に対する造血幹細胞遺伝子治療を複数行い、また、現在も同センターにおいて小児難治性疾患に対する遺伝子細胞治療を積極的に行っている。関連する学会としては、日本免疫不全自己炎症学会(副理事長)、日本遺伝子細胞治療学会(理事)があり、審議会等に関しては独立行政法人医薬品医療機器総合機構専門委員、薬事・食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会臨時委員、大阪大学第二特定認定再生医療等委員会委員等を務めている。