岡崎 利彦 氏

大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部 未来医療センター 病院教授

我が国の遺伝子治療の実用化開発の加速に向けたアカデミアの挑戦と期待

発表要旨

近年の医療技術開発の飽くなき挑戦により、夢のような新規モダリティの実用化が驚異的なスピードで具現化してきた。その一方で現実の医療およびその開発の現場においては、その余りにも急速な進捗が故に様々な課題が浮かび上がってきている。そのような新規モダリティーとして、現在、再生医療と並行し世界では遺伝子治療の臨床研究開発が急加速で競合的に進められ、安全性・有効性の画期的な実績が明らかにされる中で次世代の革新的医療として大きな注目が寄せられている。我が国は遺伝子治療の基礎研究では世界でも有数の成果を上げていながら、現在の我が国の遺伝子治療の臨床研究開発は世界市場におけるシェアが1%に留まり大きく世界の後塵を拝する惨状となっている。「技術立国・モノ作り」の日本として如何に対応すべきか?我が国に埋蔵する優れた遺伝子治療の基礎研究を如何にして世界をリードする形で実用化に持って行くのか?この問いに対し、本講演では、現状の様々な課題を見据え、製造・開発インフラの面を中心に、人材育成の課題にも触れながらアカデミアのサステナブルな挑戦を紹介すると共に、企業への提言も交えて様々な議論を行いたい。

プロフィール

厚生労働省「再生医療等の安全性確保等のための基準策定に関する研究班」特定細胞加工物の製造に関するWG3委員並びに医薬品医療機器総合機構科学委員 CPC専門部会委員 (2014年)等、我が国の再生医療分野での規制の立案に参画・政府提言を行うと共に、様々なガイダンス作成に寄与。日本再生医療学会の細胞培養加工施設管理士制度 委員長、日本遺伝子治療学会の認定医制度 副委員長を務めると共に、日本全国の細胞培養加工施設の実務者で構成される人材育成プログラム(AMED支援)の「ボトムアップ会」を主催、AMED再生・細胞医療・遺伝子治療研究実用化支援課題によるウイルスベクター製造の高度技能人材育成プログラムを主催し人材育成・教育に注力。1990年大阪大学医学部卒業。2001年Johns Hopkins University, School of Medicine, Div. of Gastroenterology (USA)留学。2008年九州大学病院 ARO次世代医療センター、特任准教授(分子細胞調製センター長(施設管理者)兼任)を経て、2019年より大阪大学医学部附属病院 未来医療センター、特任准教授、細胞培養調製施設(施設管理者)兼任。2023年より病院教授。専門は消化器内科、遺伝子治療、再生医療。医学博士(大阪大学医学部)。