尾山 和信 氏

慶應義塾大学病院 臨床研究推進センター

遺伝子治療の早期開発に向けたCMC薬事戦略と課題の要点

発表要旨

遺伝子治療は、遺伝性の難治性疾病等に対する革新的な治療法として早期の実用化が強く期待されている。本邦においても、2013年の薬機法への改正により、早期承認制度を含めた遺伝子治療の法的な整備も整い、遺伝子治療の開発推進の機運は大きく盛り上がった。その一方で、遺伝子治療のCMC研究開発においては、これまでに前例のない製品として議論すべき課題は非常に多い。ウイルスベクターの特性解析技術の開発や品質特性の理解から製造プロセスのプラットフォームと言ったCMCの技術的な要素に加え、規格試験の適切な設定から製法変更における同等性/同質性の考え方等が十分に整理されていない等の薬事規制的な要素も多い。早期開発では特にこの薬事課題において課題解決のための戦略が重要となる。本講演では、遺伝子治療用製品の早期開発におけるCMC課題の整理の他、本邦の薬事規制を踏まえたCMC薬事戦略の要点について考察したい。

プロフィール

前職の独立行政法人医薬品医療機器総合機構では、品質管理部、再生医療製品等審査部に所属し、GMP調査を担当する他、抗体医薬品、細胞加工製品、遺伝子治療用製品など多数の品目の品質審査に従事した。2019年より第一三共株式会社にて医薬品及び再生医療等製品のCMC薬事業務を担当するとともに、慶應義塾大学病院 臨床研究推進センターにおいて再生医療の推進・実現化に向けた支援業務に取り組んでいる。日本PDA製薬学会 開発QA委員会、バイオウイルス委員会に所属し、最新の規制を踏まえた品質保証の実践・あり方について情報発信を行っている。これまでに、再生医療等製品におけるCMC薬事対応、製造管理・品質管理の考え方に関する寄稿、セミナー講師を多数務める。